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京都地方裁判所 昭和63年(行ウ)20号 判決 1993年12月22日

京都市山科区西野大鳥井町五〇番地の七九

原告

岡本正治

右訴訟代理人弁護士

小川達雄

京都市東山区馬町通東大路西入ル新シ町

被告

東山税務署長 柏照正

右指定代理人

山口芳子

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告が、原告に対し昭和六二年三月三日付けでした原告の昭和五八年以降の所得税の青色申告承認取消処分を取り消す。

二  被告が、原告に対し昭和六二年三月三日付けでした原告の昭和五八年分ないし昭和六〇年分の所得税更正処分(ただし、異議決定により一部取消後のもの)のうち、別紙1の右各年分の各確定申告欄記載の事業所得金額を越える部分及びこれに対する右各年分の過少申告加算税の各賦課決定処分(以下、右更正処分、賦課決定を更正処分等という)をいずれも取り消す。

第二事案の概要

一  請求の類型(訴訟物)

本件は、原告が、被告のした青色申告承認の取消処分、更正処分等には次の違法があるとして、それぞれの取消を求めた抗告訴訟である。

(1)  青色申告承認取消処分 帳簿書類の備付け等の不備という事実誤認の違法。

(2)  更正処分等 調査手続上の違法及び総所得金額の過大認定。

二  前提事実(争いがない)

1  原告は、金箔押業を営む物である。

2  原告は、被告から、昭和五六年分以降の所得税の確定申告につき青色申告承認を受けていたが、被告はその承認取消処分をした。青色申告の承認取消、異議申立、異議決定、審査請求、裁決の経緯は、別紙2記載のとおりである。

3  原告の昭和五八年分ないし昭和六〇年分の所得税の確定申告、更正処分、異議申立、異議決定、審査請求、裁決の経緯は、別紙1記載のとおりである。

三  原告の主張

1  調査の適法性について

被告は、次の違法な税務調査に基づき本件各処分をした。

(一) 客観的必要性のない調査をした。

(二) 事前通知をしない。

(三) 第三者の立会を認めない。

(四) 調査理由の開示がない。

(五) 承諾なく、必要性もない取引先に対する反面調査を行った。

2  青色申告承認取消処分の違法性について

原告は、昭和五六年に被告から青色申告承認を受けて以来、帳簿書類を備付け、記録、保存を行っており、原告には、青色申告承認取消事由(所得税法一五〇条第一項一号)に該当する事実はない。

なお仮に、帳簿書類の提示を拒否して応じないことが、右書類の備付け等をしていないことに等しいとしても、原告が右書類の提示を拒否したのは、前示違法な税務調査に対抗するためであって、帳簿書類の提示を拒否することには正当な理由がある。

3  推計の必要性について

被告が行った原告の事業所得の金額(総所得金額と同額である)の推計は、前示違法な税務調査に基づくもので、社会通念上当然に要求される程度に調査を尽くしたといえないから、推計の必要性がない。

4  推計の合理性について

原告の営む金箔押業の同業者は、仏壇、仏具に対して金箔を用いてする加工業に限るべきである。それにもかかわらず、被告は、反物等に対し金箔押をする業者も含めて同業者を抽出し、これにより推計している。また、特別経費とみるべき外注費、雇人費を売上原価に入れている。したがって、被告の推計には合理性がない。

5  特別経費について

原告は、特別経費として、次の支出をしている(なお、被告主張の特別経費については、事業用割合を争うが、その算出根拠は争わない。)

(一) 建物減価償却費

原告は、昭和五七年七月、京都市山科区西野大鳥井町一一八番地の一七所在の土地、建物(以下、一一八の土地、建物という)を、河原崎豊一から、代金総額八二〇万円で一括購入している。被告は、後記のように右建物の事業用割合を五〇パーセントと主張する。しかし、同建物は作業所であって、右割合は、一〇〇パーセントであるから、係争年分の右建物の減価償却費は、各一七万三、五八三円である。

(二) 地代家賃

原告は、係争年分において、原告保有の自動車一台を駐車させるために、富士興業から、京都市山科区西野櫃川町七二番地の一八所在の富士ガレージを賃料年六万円で賃借した。被告は、後記のように右自動車の事業用割合について、五〇パーセントと主張する。しかし、同自動車は事業用であって、右割合は一〇〇パーセントであるから、そのガレージ代である各係争年分の右地代家賃は年額六万円である。

(三) 支払利息

(1) 原告は、昭和五七年七月九日、京都信用金庫西山科支店から、一一八の土地、建物の購入等のための借入金として八〇〇万円を借り入れた。そして、この借入金に係る利息として、昭和五八年分、三七万九、七九九円、昭和五九年分、三一万八、〇六〇円、昭和六〇年分、二五万五、六一七円を支払った。被告は、その支払利息の事業用割合を五〇パーセントと主張するが、一〇〇パーセント認めるべきである。

(2) 原告は、昭和五四年一二月二五日、事業用金箔購入用資金として京都信用金庫から金二〇〇万円を借り入れた。この借入金二〇〇万円の支払い利息として、昭和五八年分、五万三、六六二円、昭和五九年分、一万八、二七二円を支払った。

(四) 自動車減価償却費

原告は、昭和五六年六月、代金一六三万二、二九四円で事業用自動車(マツダボンゴ)を一台購入した。耐用年数六年、償却率〇・一六六として、係争年分の右自動車の減価償却費を算出すると、各二四万三、八六五円となる。

(五) 乾燥設備減価償却費

原告は、昭和五七年一〇月、金箔をはりつけた製品の接着剤を乾燥させるための乾燥設備を原告の作業所内に設置した。右設備の代金は一八万円であり、耐用年数一五年、償却率〇・〇六六として、係争年分の減価償却費を算出すると、各一万〇、六九二円となる。

(六) 電機掃除機減価償却費

原告は、昭和六〇年四月、電機掃除機を代金三〇万円で購入した。耐用年数六年、償却率〇・一六六、償却期間八ケ月として、昭和六〇年分の右の減価償却費を算出すると、二万九、八八〇円となる。

四  被告の主張

1  調査の適法性について

税務調査の必要性は、申告の真実性、正確性を確かめる必要があれば足りる。

質問検査権の範囲、程度、時期、方法等は、税務職員の合理的な選択に委ねられており、調査の事前通知、理由の告知等も、その要件ではない。

本件税務調査手続に、社会通念上相当な限度を越えた違法な点はない。

2  青色申告承認取消処分の適法性について

(一) 被告は、部下職員をして、原告の本件係争年分の所得税調査に当たらせた。右職員は、昭和六〇年一〇月二一日以降、前後一一回にわたり原告の事業所又は自宅に赴き、帳簿書類の提示等税務調査に対する協力を求めた。これに対し、原告又はその妻は、調査に関係のない第三者の立会いを要求し、第三者の立会いのない場所で帳簿書類を提示することを拒否するなど税務調査に協力しなかった。

(二) 原告が、被告の要求する帳簿書類の提示に応じず、これを拒否していることは、右書類の備付け等をしていないことに等しく、原告の右行為は、青色申告承認取消事由(所得税法一五〇条一項一号)に該当する。

3  推計の必要性について

(一) 右2(一)のとおり被告は税務調査に協力しない。

(二) このため、被告は、やむを得ず、原告の取引先等に対する反面調査を行い、推計により算定した事業所得金額に基づき本件各更正処分等を行った。

(三) したがって、本件事業所得金額の計算には、推計の必要性が存在する。

4  推計の合理性について

(一) 同業者の抽出経緯

大阪国税局長は、原告の事業所の所在地を管轄する被告のほか、これに隣接する中京、下京、左京、伏見の各税務署長に対し、本件係争年分を通じて別紙3記載のすべての基準を満たす者を抽出するよう通達指示した。これに従い、各税務署長が右基準に従って機械的に抽出した同業者は、別紙3記載のとおり、下京管内で三名、東山税務署管内で一名の四名であった。

(二) 金箔押業について

(1) 被告は、呉服、反物に対し金箔を用いて加工する業者を金彩加工業といい、金箔押業とは区別している。そのため、本件において被告が抽出した業者には、呉服、反物に対し加工する業者は含まれていない。

(2) 原告の営む金箔押業は、外注費及び雇人費が売上金額と対応関係にあると認められるから、これを売上原価に含めるべきである。

(三) 売上原価

原告の本件係争年分の売上原価は、仕入金額、外注費及び雇人費の合計額であって、別紙5の<3>売上原価欄記載のとおりである。(なお、右仕入金額の算定に当たっては、係争年分の期首、期末の棚卸高を同額として算出する。)

(四) 売上金額

原告の本件係争年分の売上金額は、いずれも、右(三)の各売上原価を別紙4の各<5>欄記載の「売上原価率」(売上原価及び配偶者以外に支給した青色事業専従者給与の合計額の売上金額に対する割合)の平均値でそれぞれ除して算出したものであり、その金額は、別紙5の<1>売上金額欄記載のとおりである。

(五) 算出所得金額

原告の本件係争年分の各算出所得金額は、右(四)の各売上金額に、別紙4の各<8>算出所得率欄記載の同業者の「算出所得率」(売上金額から売上原価、配偶者以外に支給した青色事業専従者給与の合計額及び一般経費を控除した金額を売上金額で除した割合)の平均値を乗じて算出したものであり、その金額は、別紙5の<5>算出所得金額欄記載のとおりである。

(六) 特別経費の金額

(1) 建物減価償却費

昭和五七年七月、原告が、一一八の土地、建物(二階建)を、河原豊一から、代金総額八二〇万円で一括購入したことは認める。しかし、原告が事業所としていたのは右建物の一階部分にすぎない。その建物の取得価額は、右代金総額に固定資産評価額を基礎として右土地と建物の割合比を乗じて算出すると、取得価額は二一四万三、〇〇〇円となる。耐用年数を一一年として定額法により、事業用割合を五〇パーセントとして計算すると、建物減価償却費の金額は、別紙5の<6>のイ欄記載のとおりである。

(2) 地代家賃

原告が、富士興業株式会社から、ガレージを賃料年六万円で賃借していたことは認める。しかし、原告の右保有車両は事業用専用といえないから、事業用割合を五〇パーセントとして計算すると、地代家賃の金額は別紙5の<6>のロ欄記載のとおりである。

(3) 支払利息

a 原告が、京都信用金庫西山科支店に対し、右(1)の土地、建物の購入等のための借入金に係る利息としてその主張どおり支払ったことは認める。しかし、一一八の建物の前示事業用割合に従い、五〇パーセントとして計算すると、その金額は、別紙5の<6>のハ欄記載のとおりである。

b 原告主張の前示三5(三)(2)の事業金箔購入用借入金の支払利息は、借入金融機関及び借入目的が不明であり、認められない。

(4) その他

原告の営む金箔押業のような製造業において、原告主張の自動車、乾燥設備及び電気掃除機の各減価償却費は、売上金額に比例する。そうであるから、これは一般経費の控除の一つとして、既に同業者の算出所得率に組み込まれているので、特別経費として控除する必要はない。

(七) 事業所得金額

原告の各年分の事業所得の金額は、前記(五)の各算出所得金額から、(六)の各特別経費及び別紙5の<7>欄記載の事業専従者控除の金額を控除した金額であり、別紙5の<8>事業所得金額欄記載のとおりである。

第三争点の判断

一  調査の適法性について

所得税法二三四条一項は、税務署等の調査権限を有する職員が、申告の体裁内容、帳簿等の記入保存状況等、諸般の具体的事情にかんがみ、客観的必要があると判断される場合に、質問し、検査を行う権限を認めた趣旨である。

この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等の実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限のある税務職員の合理的な選択に委ねられている。また、実施の日時場所の事前通知、調査の理由及び必要性の個別的、具体的な告知は、質問検査を行ううえの法律上一律の要件とされているものではない(最決昭四八・七・一〇刑集二七巻七号一二一一頁、最判昭五八・七・一四訟務月報三〇巻一号一五一頁)。

そして、右の質問検査ないし税務調査の必要性は、納税義務の適正、公平な実現を確保するため、申告の真実性、正確性を確かめる必要があると判断される場合を指す。また、いわゆる反面調査について特に納税義務者の承諾を得る必要はなく、質問検査を必要とする客観的理由が存在する限り、右の要件の下に質問検査権行使の一つとして反面調査を行うことができる。

本件において、原告主張の客観的具体的必要性が欠如したという調査、事前通知、調査理由の開示をしなかったこと、調査に第三者の立会いを認めなかったこと、原告の承諾なく反面調査を行ったことなどの点において、税務調査の客観的必要性を欠くとか、調査担当職員に裁量権の濫用があるとか、本件調査の方法や程度が、原告との利益衡量において、社会通念上相当な限度を越え違法であるとすべき事実は、本件全証拠によるも認めることはできない。

よって、原告の主張1は失当である。

二  青色申告承認取消処分の適法性について

所得税法一五〇条一項一号の帳簿書類の備付け、記録又は保存は、記録された帳簿書類を単に納税者において備付け等をしていることで足りるものではなく、同法二三四条に照らすと、税務署長又は所部の職員が必要に応じていつでもその正確性等について閲覧確認し得る状態にしておくことが必要である。したがって、青色申告者が右帳簿書類の提示、調査に応じないため、税務署長において右帳簿の備付け、記録又は保存が正しく行われているか否かを確認出来なかった場合には、同号の取消事由に該当する。

そして、本件において、証拠(証人平山武弘、同田村重樹、原告)、弁論の全趣旨によれば、被告の主張2(一)のとおり正当事由のない帳簿不提示等の事実が認められる。

そうだとすると、被告は、右帳簿の備付け、記録又は保存が正しく行われているか否かを確認できなかったもので同法一五〇条一項一号所定の帳簿書類備付け、記録、保存が正しく行われていないものというほかない。

したがって、同条一項一号の取消事由に該当するとして被告がした青色申告承認取消処分は適法であって、違法な点はなく、原告の主張は採用できない。

なお、原告は、帳簿の提示を拒否することは、違法な調査に対抗する正当な行為であるという。しかし、右一のとおり、本件調査は適法であるから、この原告の主張はその前提において理由がない。

三  推計の必要性について

証拠(承認平山武弘、同田村重樹、原告)、弁論の全趣旨によれば、被告の主張3(一、2(一)のとおり帳簿不提示などの調査非協力の事実が認められる。

したがって、被告が、社会通念当然に要求される程度の努力をしても、原告の本件係争年分の各所得税を算出するについて、実額計算によることができないもので、推計課税を行う必要があったことが認められ、これに反する原告本人尋問の結果(一部)は信用できず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

四  推計の合理性について

1(1)  同業者の抽出経緯

証拠(乙六の1ないし5、七の1ないし5、承認松原一敏)によれば、被告の主張4(一)の事実が認められる。右同業者の選定基準は、業種の同一性、事業所の近隣性、事業規模の近似性の点で同業者の類似性を判別する要件として合理的なものである。その抽出作業について被告を初め各税務署長あるいは大阪国税局長の恣意の介在する余地は認められず、かつ、右調査の結果の数値は青色申告書に基づいたもので、その申告が確定しており信頼性が高い。抽出した同業者数は四名であるが、各同業者の個別性は平均化されていると判断される。

そして、右同業者の本件係争年分の売上金額、売上原価、売上原価率、一般経費、算出所得金額、算出所得率は、別紙4記載のとおりである。

したがって、右各同業者の平均売上原価率、平均算出所得率を基礎に算出された原告の本件係争年分の所得金額の推計には、特段の事情のない限り、合理性があるということができる。

(2)  ところで、原告は、被告が金箔押業者として、本来別業者であるはずの反物等に対して金箔押しをする業者も抽出している旨主張する。しかし、証拠(証人松原一敏、乙一五)によれば、被告主張4(二)(1)の事実のとおり、被告の抽出した同業者には呉服、反物等に加工する業者が含まれていないことが認められるため、この点の原告主張はその前提において失当である。

なお、被告は、茶道具等に対し金箔を押す事業主も金箔押業者に含めているが、同事業主が、仏壇仏具に金箔を押す事業主と業態をとくに異にすると疑うべき合理的理由はなく、前示の被告が抽出した事業主に茶道具等に対し金箔を押す事業主が含まれていても推計の合理性を左右するものではない。

(3)  原告は、外注費及び雇人費を売上原価に含めるべきでないとも主張する。しかし、証人松原一敏の証言によれば、原告の営む金箔押業の場合、各年度における一定額以上の売上を得るためには、外注費及び雇人費といった支出が伴うのが通例であって、これらの費用は製品の原価費用を構成し、売上金額に密接に関連していることが認められる。そして、労働力を調達する方法等が事業主ごとに違いがあるとしても、それは同業者の間に通常存する程度の営業形態の差異にすぎず、平均値に吸収されるものである。したがって、原告の右主張は採用できない。

2  売上原価

別紙6の<3>欄記載の売上原価は、当事者間に争いがない。

3  売上金額

右2認定の本件係争年分の各売上原価に、別紙4の各<5>欄記載の「売上原価率」の平均値でそれぞれ除して算出される原告の売上金額は、別紙6の<1>欄記載のとおり、被告の主張額と同額である。

4  算出所得金額

右3認定の本件係争年分の各売上金額に、別紙4の各<8>の算出所得金額欄記載の同業者の「算出所得率」の平均値を乗じて得られる原告の算出所得金額は、別紙6の<5>欄記載のとおり、被告の主張額と同額である。

5  特別経費の金額

(一) 建物減価償却費

原告が、主張する一一八の建物の減価償却費について、建物の取得価格、耐用年数、減価償却費を算出する計算方法は、当事者間に争いがない。

原告は右建物の事業用割合を一〇〇パーセントと主張し、被告は、五〇パーセントとして争っている。この点、証拠(原告、甲一、二)によれば、原告は係争年分において、一一八の建物を事業所として使用するとともに、右同町五〇番地七九に所有する同建物を居住に供していたことが認められる。

そこで、一一八の建物の事業用割合は原告主張どおりに一〇〇パーセントと認定するのが相当である。そうすると係争年分の右建物の減価償却費の金額は、係争年分各一七万三、五八三円である(別紙6の<6>のイ欄)。

(二) 地代家賃

原告が、富士ガレージを賃料年六万円で賃借していたことは、当事者間に争いがない。右ガレージに駐車していた自動車の事業用割合について、原告は一〇〇パーセントであるといい、被告は、五〇パーセントとして争っている。そして、原告の右主張に副う原告本人尋問の結果は、不自然、不合理であってたやすく信用できず、他にこれを認めるに足りる証拠がない。

したがって、右自動車及び地代家賃の事業用割合は、五〇パーセントとして計算するのが相当であって、別紙6の<6>のロ欄のとおりであり、その金額は被告主張額と同じである。

(三) 支払利息

(1) 原告が、京都市信用金庫西山科支店から、右(一)の建物及びその敷地である一一八の土地、建物を入手するために八〇〇万円を借入れ、その主張どおりの利息を支払っていたことは、当事者間に争いがない。

右土地及び建物の事業用割合は右(一)認定のとおり、一〇〇パーセントであるから(建物が一〇〇パーセントであれば、その敷地も一〇〇パーセントになる。)、それに基づき計算すれば、その金額は、原告主張のとおり、昭和五八年分、三七万九、七九九円、昭和五九年分、三一万八、〇六〇円、昭和六〇年分、二五万五、六一七円である。

(2) 証拠(原告、甲四、八)によれば、原告は、昭和五四年一二月二五日、事業用金箔購入資金として、京都信用金庫から二〇〇万円を借入れ、その利息として、昭和五八年分、五万三、六六二円、昭和五九年分、一万八、二七二円を支払った事実が認められる。

したがって、この点についての原告の主張は理由がある。

(3) 支払利息の総額は、別紙6の<6>のハ欄のとおり、昭和五八年分、四三万三、四六一円、昭和五九年分、三三万六、三三二円、昭和六〇年分、二五万五、六一七円となる。

(四) その他

原告は特別経費としてその他に、自動車、乾燥設備及び電機掃除機の各減価償却費を主張する。しかし、これらは売上金額に比例し一般的に支出される費用であって、およそ事業主の個別的事情に左右される特別経費とは認めがたく、原告の右主張は採用できない。

6  事業所得の金額

以上の事実によれば、原告の本件係争年分の各事業所得の金額は、右4の算出所得金額から、右5の特別経費及び事業者専従控除(別紙6の<7>欄)を差引いた額であるから、昭和五八年分は、七〇一万三、〇〇三円、昭和五九年分は一、一五一万四〇九三円、昭和六〇年分は一、〇四六万一、四六二円となる(別紙6の<8>欄)。

五  各更正処分の適法性

よって、被告の推計による本件係争年分の各更正処分は、いずれも右認定の事業所得の金額の範囲内でなされた適法な処分であり、これに違法な点はない。

第四結論

以上のとおりであるから、被告の本件各処分はいずれも適法であって、本訴各請求は理由がないから、これらを棄却する。

(裁判長裁判官 吉川義春 裁判官 中村隆次 裁判官 遠藤浩太郎)

別紙1

課税の経緯

<省略>

別紙2

青色申告の承認取消し処分の経緯

<省略>

別紙3

同業者の抽出基準

1 金箔押業を営んでいること

2 他の業種目を兼業していないこと

3 年間を通じて事業を継続して営んでいること

4 事業所が、中京、下京、左京、東山及び伏見の各税務署のいずれかの管内にあること

5 売上原価が六〇〇万円以上、三、二〇〇万円未満であること(右売上金額の範囲は、原告の売上原価を基準に、上限を昭和五九年分の約二倍、下限を昭和五八年分の約半分としたものである)

6 対象年分の所得税について、不服申立て又は訴訟が係属中でないこと

別紙4

同業者の売上原価率及び算出所得率表

(昭和58年分)

<省略>

(昭和59年分)

<省略>

(昭和60年分)

<省略>

別紙5

事業所得金額の計算

(被告主張分)

<省略>

別紙6

事業所得金額の計算

(当裁判所認定分)

<省略>

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